Google I/O 2021、WWDC 2021が2021年05月と06月に開催されました。GoogleとAppleの開発者向け年次カンファレンスとあって、数多くの発表が行われています。その多くは新しいOS(Android/iOS)に関連するものですが、中にはAIや機械学習に関連するものも含まれています。
そんなセッションの中から、プライバシーに関する取り組みが目を引きましたので紹介します。
オフラインで動作するAI
Android 12ではPrivate Compute Core、iOS 15ではオンデバイス・インテリジェンスと呼ばれる機能(概念)が発表されています。これはどちらもデバイス(スマートフォンやタブレット)上でAIを実行することで、クラウド上にデータをアップロードせずに利用できるというものです。
このデバイス上で動作するAIの利点は2つあります。
- プライバシー
- 速度
昨今、SiriやAmazon Echo、Google Homeなどに話しかけてタスクを行わせるスマートスピーカーが人気です。この音声について、クラウド側にアップロードされることでプライバシーが侵害される問題が発生しています。
- 数千人のAmazon従業員がAlexa利用者の音声を聞いていた - iPhone Mania
- アップル、「Siriの盗聴問題」で信頼回復を図る 会話分析に新ルールを設けて秋に再開(1/2) | JBpress (ジェイビープレス)
こうした問題を受けて、音声を解析し、その意味や意図を見いだす部分においてはデバイス上で処理を行うようになっています。さらに多くの処理においてはデバイス上で処理が完結するので、クラウドを介することなく処理が可能になります。
オフラインでも処理できるようになれば、実行速度の面でもメリットがあります。ネットワークがオフラインの場合はもちろん、速度の遅い地域や場所、月末の帯域を使い切ってしまった状態においても高いレスポンスが期待できるでしょう。
Google I/O 2021の機械学習セッション
Google I/O 2021でのAI、機械学習系セッションは多数あります。大雑把にカテゴリごとに分けて紹介します。興味があるセッションをぜひチェックしてください。
全般
- 機械学習の最新情報
- 機械学習のよくある問題の発見と解決
- Coral: エッジの AI 環境を広げる
- Android における機械学習の最新情報
- 実世界に影響を与える TensorFlow Hub
- ユーザー補助のための機械学習
- 信頼できる AI プロダクトの構築
アプリ
- Responsible AI Toolkit を使用した構築
- TensorFlow Lite モデルの最適化
- アプリで ML を使用しているなら TFX を利用してプロダクト化を
- Vertex AI を使用したエンドツーエンド ソリューションのビルド
- ML Kit: モバイルアプリでデバイス搭載 ML を利用するためのターンキー API
- Model Maker でプラットフォームをまたいだコンピュータ ビジョンが簡単に
- TensorFlow Lite for Microcontrollers による構築
- TensorFlow Lite によるカスタムのオブジェクト検出モデル構築とデプロイ
Web
- TensorFlow.js を使用した次世代ウェブアプリの機械学習
- Angular と TensorFlow.js による将来を見据えたウェブアプリ
- TensorFlow.js:トレーニング済モデルと JS でスマート ウェブカメラを作成
テクニック
デモ
WWDC 2021の機械学習セッション
WWDC 2021についても大雑把に分けてあります。興味あるセッションをご覧ください。
アプリ
- Use the camera for keyboard input in your app - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Discover built-in sound classification in SoundAnalysis - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Dive into RealityKit 2 - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Build dynamic iOS apps with the Create ML framework - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Create custom audio experiences with ShazamKit - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
テクニック
- Accelerate machine learning with Metal Performance Shaders Graph - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Tune your Core ML models - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Classify hand poses and actions with Create ML - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
- Extract document data using Vision - WWDC 2021 - Videos - Apple Developer
まとめ
Google I/O、WWDCともにAIにおけるエッジ処理、そしてプライバシーへの懸念解消を取り上げています。スマートフォンやタブレットが高機能化する中で、エッジで処理できるAIは高性能化していきそうです。AIや機械学習に関わる開発者の方は要注目です。